Monull
MONULL
中小設備設計事務所のBIM導入ロードマップ|1年目・2年目・3年目で何をやるか
CAD/BIMナレッジ導入

中小設備設計事務所のBIM導入ロードマップ|1年目・2年目・3年目で何をやるか

中小設備設計事務所のBIM導入を「1年目・2年目・3年目」の3フェーズに分解した実践ロードマップ。「全案件BIM化」か「導入見送り」かの二択ではなく、限られた人員と予算のなかで現実的に進めるための、各年度のゴール・具体タスク・落とし穴・KPIを整理しました。

長谷川一夫

機械設備設計部

公開日
更新日

はじめに|中小事務所のBIM導入は「やる/やらない」の二択ではない

中小の設備設計事務所でBIM導入を検討すると、議論はしばしば「やるか/やらないか」「ソフトを買うか/買わないか」という二択に収束しがちです。しかし、現実にBIMを定着させている事務所を見ると、共通しているのは二択で決めたことではなく、1年目・2年目・3年目でやることをきちんと仕分けて段階的に進めている、という点です。

本記事では、中小設備設計事務所が限られた人員と予算のなかでBIMを導入・定着させていくための3年間ロードマップを示します。「1年目は何をどこまでやり、2年目で何を拡げ、3年目で何を定着させるのか」を判断するための見取り図として活用してください。

1年目|「足場」をつくる期間

ゴール:モデル案件を1件、最後までやり切る

1年目のゴールは「全案件のBIM化」ではありません。狙うべきは、モデルケースとなる案件を1件、BIMで最後までやり切ることです。これにより、自社における「うちのBIM実務」の具体事例ができ、教科書では見えてこない課題が一通り表面化します。この経験が、2年目以降の判断材料になります。

1年目にやること

  • ソフト選定とライセンス購入(まずは1〜2名分。初年度は予算を多めに見積もる)
  • BIM推進担当者の選定(意欲のある中堅・若手を1名、その人の業務の2割程度をBIMに振り分ける)
  • トレーニング(ベンダー提供研修や外部セミナーを活用し、自社単独で抱え込まない)
  • モデル案件の選定(複雑すぎない中規模・基本設計期間に余裕がある・チームが協力的、の3条件で選ぶ)
  • テンプレートは「借りもの」で進める(いきなり自社テンプレを作ろうとせず、ベンダー標準や業界団体のテンプレを活用する)

1年目の落とし穴

初年度から人員と予算をフルに投入してしまうと、「成果が見えない」「現場が疲弊している」という評価が社内で広がり、せっかく確保したBIMコア人員の離脱を招きかねません。1年目はあえて「モデル案件1件」にスコープを絞り、社内の納得感を積み上げる年と割り切ることが重要です。

2年目|「拡げる」期間

ゴール:BIM案件を3〜5件、チームを3名以上に

2年目は、初年度のモデル案件で見えた「うちの場合の課題」を踏まえて、BIM案件の本数を拡げる期間です。あわせて重要なのが、BIMをやれるチームを3名以上に増やすこと。1名体制のままだと「その人が辞めたら振り出しに戻る」リスクを抱え続けることになり、事業としてはきわめて危うい状態です。

2年目にやること

  • チーム拡充(追加で2名。社内異動・中途採用・オペレーター育成を組み合わせる)
  • 自社テンプレートの整備(1年目で見えた「うちの作法」をテンプレ化する。最初から完璧を目指さない)
  • ファミリ・部品データの整備(主要メーカーに絞り込むのがコツ。全メーカー対応は3年目以降でよい)
  • BIM案件の見積・契約ルールの見直し(「BIMでも従来と同じ報酬では受けない」を社内で明文化する)
  • 取引先との受け渡しルールの明文化(1年目の反省を踏まえ、簡易版BEPを作成するイメージ)

2年目の落とし穴

2年目で起きがちなのが、BIM推進担当者を「便利な人」として通常業務にも引き戻してしまうケースです。BIM案件の設計、テンプレ整備、社内教育を並行させるには、その人の通常業務を意識的に軽くしておく必要があります。役職と工数の両方で「BIM推進に時間を使ってよい」という合意を経営層で取り付けておくことが大切です。

3年目|「定着」させる期間

ゴール:主要案件の「定番ツール」にする

3年目は、主要案件においてBIMを「定番ツール」として位置づける期間です。ここでいう「定番ツール」とは、「あの事務所といえばBIM」という認識が、社外の取引先と社内の若手の両方に共有されている状態を指します。

3年目にやること

  • BIMマネージャー職の設置(テンプレ管理・チーム管理・データ受け渡し管理を明確な業務として位置づける)
  • テンプレ・ファミリの保守体制を明文化(誰が・どの頻度で・いつ見直すかをルール化する)
  • 複数チームでBIM案件を並行運用できる体制づくり(コアチーム1つに依存しない構造に)
  • 取引先・採用市場への「BIM対応事務所」としての発信
  • 事業計画上のBIM案件比率・報酬単価の見直し(投資回収フェーズに入っているかを数字で確認する)

「3年で定着」しないケースもある

正直に書いておくと、すべての中小事務所が3年でBIMを定着できるわけではありません。BIM推進担当者の離脱、受注環境の悪化、手描き世代との温度差など、スケジュールが後ろにずれる要因はいくつもあります。

それでも、「1年目はモデル案件1件」というスコープを最初に決めておくだけで、社内の議論は「BIMをやるか/やらないか」から「BIMをどこまでやるか」へと一段進みます。これは長期で見れば、地味でも大きな前進です。

3年間を通して追うべきKPI

3年間にわたって定点観測したい指標は、次の3つです。

  • BIM案件比率(受注案件全体に占めるBIM案件の割合)
  • BIM担当可能人員数(実務で1人称で動かせる人の数)
  • 1案件あたりのBIM追加工数(BIM化による上乗せ工数の推移)

この3つを四半期や半期ごとに振り返れば、BIM導入が「なんとなく進んでいる」のか「実は止まっている」のかが、感覚ではなくデータで把握できます。経営判断の精度が一段上がります。

まとめ|「3年の長期計画」と「1年目のスコープ絞り」を両立する

中小設備設計事務所のBIM導入で最も大事なのは、1年目にすべてをやろうとしないことと、その上で3年間の長期計画を描くことです。「モデル案件1件」「チーム3名」「定番ツール化」という3つのマイルストーンをぶらさずに進めれば、予算と人員に限りのある事務所でも、BIMを実務に根づかせる道筋はきちんと見えてきます。

パラダイムでは、中小設備設計事務所のBIM導入計画の設計、初年度モデル案件の伴走、テンプレート整備の支援を行っています。「うちの規模と人員でどう進めるか」のロードマップ相談は、お気軽にお問い合わせください。