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IFCファイルとは|開き方・変換方法と設備モデル受け渡しの注意点
CAD/BIMナレッジデータ構造

IFCファイルとは|開き方・変換方法と設備モデル受け渡しの注意点

IFCファイルの基礎から、開き方・変換方法、そして設備(MEP)モデルを受け渡す際に失われやすい情報とその回避策までを実務目線で徹底解説。IFC2x3とIFC4の違い、MVDの選び方、テスト変換の手順、受け渡しチェックリストまで網羅します。

長谷川一夫

機械設備設計部

公開日
更新日

異なるBIMソフト間でモデルを受け渡すとき、必ず登場するのがIFCファイルです。しかし「開いたら情報が抜け落ちていた」「相手のソフトで正しく表示されない」「配管の系統がバラバラになっていた」といったトラブルは、設備設計の現場で日常的に起こります。原因の多くは、IFCという仕組みそのものではなく、バージョンや変換設定の合意不足にあります。本記事では、IFCファイルの基礎から開き方・変換方法、設備(MEP)モデルを受け渡す際に失われやすい情報とその回避策、さらに現場ですぐ使えるチェックリストまでを、実務目線で体系的に整理します。

IFCファイルとは

IFC(Industry Foundation Classes)は、buildingSMARTが策定した建築・設備モデルの中立(オープン)フォーマットです。特定ベンダーのソフトに依存しない共通言語として、RevitやRebro、Archicad、Tekla、CADEWAなど異なるソフト間でモデルを交換するために使われます。ISO 16739として国際標準化されており、国土交通省のBIM/CIM関連指針や公共案件のBIMデータ納品でも標準的に指定されるフォーマットになっています。

IFCの中身は、壁・柱・ダクト・配管といった「オブジェクト(要素)」と、それぞれが持つ「属性(プロパティ)」、そして要素同士の「関係」を記述したデータの集合です。拡張子は.ifc(テキスト形式)のほか、圧縮版の.ifczip、XML形式の.ifcXMLがあります。つまりIFCは単なる3D形状データではなく、形状と情報の両方を運ぶ器であるという点が、DWGやDXFといった従来のCADデータとの大きな違いです。

IFC2x3とIFC4の違い

実務で遭遇するIFCのバージョンは主にIFC2x3とIFC4の2つです。IFC2x3は2006年公開の枯れた仕様で、対応ソフトが最も多く、受け渡しの安定性という点では現在も事実上の標準です。一方IFC4はジオメトリ表現の高度化や設備要素の定義拡張が図られており、より豊かな情報を運べますが、送り手・受け手双方のソフトが同等に対応していないと逆に不整合が生じることがあります。

実務上の原則はシンプルで、「相手が確実に読めるバージョンに合わせる」ことです。特に指定がなく安定性を優先するならIFC2x3、発注者がIFC4を要件としているならIFC4を選びます。重要なのは、送り手と受け手が同じバージョンで書き出し・読み込みを行うよう、プロジェクト開始時に取り決めておくことです。

MVD(Model View Definition)とは

IFCの受け渡しで見落とされがちなのがMVD(Model View Definition)です。MVDは「IFCの全仕様のうち、どの範囲を書き出すか」を定めたサブセットの定義で、用途に応じて出力する情報の範囲が変わります。代表的なものにCoordination View(調整・干渉チェック向け)やReference View、Design Transfer View(編集を前提とした受け渡し向け)があります。

同じモデルでも、選ぶMVDによって書き出されるジオメトリの形式や属性の粒度が変わります。たとえば干渉チェックだけが目的なら軽量なCoordination Viewで十分ですが、受け取った側で形状を編集したい場合はDesign Transfer Viewを選ばないと期待した編集ができません。バージョンとMVDはセットで合意しておくのが鉄則です。

IFCファイルの開き方

IFCを開く方法は、目的によって大きく2通りに分かれます。ひとつは「内容を確認するだけ」の閲覧、もうひとつは「自社モデルと統合して作業する」インポートです。

閲覧だけなら、無料のIFCビューアで十分です。代表的なものにBIMvision、Solibri Anywhere、usBIM.viewer、Autodesk Viewerなどがあり、要素の属性値や系統情報、簡易的な干渉確認まで無料で行えます。編集を伴わず「何が入っているか」を確認するだけなら、これらのビューアを使うのが最も手軽で確実です。

自社モデルと重ね合わせて干渉チェックや整合確認を行いたい場合は、RevitやRebroなどのオーサリングソフトにインポートします。ただしインポート時の変換設定によって取り込まれる情報が変わるため、「開けたけれど属性が入っていない」といった事態が起こり得ます。作業目的で取り込む際は、後述する変換設定を必ず確認してください。

IFCへの変換(書き出し)方法

IFCへの変換は、各オーサリングソフトの「エクスポート(書き出し)」機能で行います。RevitではファイルメニューからのIFCエクスポート、RebroやArchicadでもそれぞれ専用のIFC書き出し機能が用意されています。ここで重要なのが、書き出しの前に「バージョン」「MVD」「マッピング設定」の3点を確認することです。

特にマッピング設定は、自社ソフト内のカテゴリやファミリを、IFCのどのクラス(IfcDuctSegment、IfcPipeSegmentなど)に対応させるかを決める要です。ここが正しく設定されていないと、ダクトが正しい設備要素として認識されず、受け取った側で「ただの形状」として扱われてしまいます。書き出しプロファイル(設定のプリセット)を作り、プロジェクトで統一して使うと属性の取りこぼしを防げます。

設備モデルの受け渡しで失われやすい情報

設備(MEP)モデルをIFCで受け渡すと、以下のような情報が失われたり変質したりしやすくなります。設備は建築要素に比べて「情報のつながり」に依存する部分が多く、この点がIFC受け渡しの難所になります。

  • 系統情報(システム分類):給水・排水・空調などの系統区分が保持されず、要素がどの系統に属するか判別できなくなる。
  • 接続情報(コネクタ):ダクトや配管の接続関係が切れ、受け取った側でつなぎ直しや自動計算ができなくなる。
  • パラメータ(勾配・保温・材質・口径など):自社ソフト固有のパラメータがIFCの標準属性にマッピングされず欠落する。
  • ファミリ・オブジェクトの編集可能性:パラメトリックな編集ができなくなり、静的なジオメトリ(形状)として固定される。
  • フロー計算・系統計算の情報:Revit MEP等で設定した流量・圧損などの計算条件が失われ、再計算できなくなる。

特にRevit MEPで設定した系統やフロー計算の情報は、IFC変換後は静的なジオメトリと属性値だけになり、受け取った側で再編集できないケースがほとんどです。「IFCで渡せば元通りに編集できる」という前提は誤りであり、IFCは基本的に『調整・確認のための受け渡し』に向いたフォーマットだと理解しておくことが、無用なトラブルを避ける第一歩になります。

トラブルを避けるための実務ポイント

受け渡し前にIFCのバージョン(IFC2x3かIFC4か)とMVDを、発注者・協力会社と合意しておくことが最も重要です。これが決まっていないと、後工程での手戻りが一気に増えます。加えて、書き出し前にマッピング設定を確認し、必要な属性が出力対象になっているかをテスト変換(小さな範囲での試し書き出し)で検証します。

受け渡し後は必ずビューアで開き直し、意図した情報が保持されているかを送り手・受け手の双方でチェックする運用を徹底しましょう。送った側が自分のソフトで確認して問題なくても、受け取った側のソフトでは違って見えることがあります。「相手のソフトで開いた状態」を基準に確認するのが、認識のズレを防ぐコツです。

受け渡し前チェックリスト

よくある質問(FAQ)

IFCで渡したモデルは相手側で自由に編集できますか?

基本的には、元のようなパラメトリックな編集はできません。IFCは調整・確認向けのフォーマットで、多くの場合は静的な形状+属性として渡ります。編集を前提にするならDesign Transfer ViewなどのMVDを選ぶ必要がありますが、それでも完全な再現は保証されません。編集が必須なら、同一ソフトのネイティブ形式での受け渡しを検討してください。

IFC2x3とIFC4、どちらで渡すべきですか?

特に指定がなく安定性を優先するならIFC2x3が無難です。対応ソフトが多く、受け渡し実績も豊富だからです。発注者がIFC4を要件としている場合や、より詳細な情報が必要な場合はIFC4を選びますが、双方のソフトが同等に対応していることを事前に確認してください。

位置がずれて重ならないのはなぜですか?

座標系や基準点(共有座標・プロジェクト基点)が送り手と受け手でそろっていないことが主な原因です。書き出し時に共有座標を使う設定にし、プロジェクト開始時に基準点を関係者間で統一しておくと、重ね合わせのズレを防げます。

まとめ

IFCは異なるBIMソフトをつなぐ中立フォーマットですが、変換によって設備特有の情報(系統・接続・パラメータ・編集可能性)が失われるリスクを常に伴います。逆に言えば、この特性を理解したうえで運用すれば、IFCは調整・干渉チェックのための強力な共通言語になります。

押さえるべきは、①バージョンとMVDの事前合意、②マッピング設定の確認とテスト変換による検証、③受け渡し後の相互チェック、という3つの運用です。この3点を仕組みとしてプロジェクトに組み込めば、「開いたら情報が抜けていた」というトラブルは大きく減らせます。IFCを『万能の再現フォーマット』ではなく『目的に応じて使い分ける受け渡しの道具』として捉えることが、設備BIM連携を成功させる最大のポイントです。