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設備BIMのLOD設定ガイド|基本設計・実施設計・施工段階での使い分け
CAD/BIMナレッジモデル運用

設備BIMのLOD設定ガイド|基本設計・実施設計・施工段階での使い分け

設備BIMのLOD(詳細度)を基本設計・実施設計・施工の各段階でどう使い分けるかを実務目線で整理。LOD100〜500の意味と設備での具体例、LOD(幾何形状)と属性情報(LOI)の切り分け、よくある3つの誤り、プロジェクト初期に決めておくべきチェックリストまで解説します。

長谷川一夫

機械設備設計部

公開日
更新日

はじめに|LODは「詳細度」と「信頼度」の両方を表す

LOD(Level of Development)は、BIMモデルの「詳細度」だけではなく、そのレベルのモデルが「どれだけ信頼して使ってよいか」を示す指標でもあります。言い換えれば、LOD300のモデルとは、「そこに描かれている位置・寸法・接続は設計レベルで信じて使っていただいて構いません」というサインでもあるわけです。

この前提を理解せずにLODを設定してしまうと、「やりすぎてコストオーバー」と「やり足りずで後工程トラブル」という、両方の意味で足を取られます。本記事では、設備BIMのLODを設計段階ごとにどう使い分けるかを、中小設備設計事務所の目線で実務的に整理します。

LOD100〜500の意味と、設備BIMでのイメージ

まずは一般的なLODの定義と、設備BIMに当てはめたときの具体例を整理します。定義は「BIMForum LOD Specification」をベースにしつつ、日本の設備設計実務で使いやすい表現に整えています。

  • LOD100:シンボル・ボリュームレベル。設備では「ここに機械室がある」「この階にAHUが何台」というオーダーの表現
  • LOD200:主要な幾何形状を位置と寸法で表現。設備では「主要ダクトルートとサイズ」「主要配管ルートと口径」「主要機器の位置・外形」レベル
  • LOD300:設計仕様レベルで作り込む。設備では「チーズ・エルボ・分岐を含めたダクト・配管ルート」「接続関係・勾配」「主要バルブ・フィッティングサイズ」レベル
  • LOD400:施工レベルで部品詳細まで表現。設備では「スリーブ・サポート・フレキシブルダクト」「メーカー型番・取付金物」レベル
  • LOD500:現品を反映した現状モデル。竣工後の維持管理用や、リノベーション時の現況調査で使うレベル

重要なのは、LODは「モデル全体」に付けるラベルではなく、「部位・スコープごと」に付けるものだという点です。同じ設計フェーズでも「主要機器はLOD300、それ以外の見えがかり機器はLOD200」という使い分けが普通にあり得ます。

設計段階ごとのLOD使い分け

基本設計段階:LOD200を主軸に

基本設計段階は、主要機械・主要ダクトルート・主要配管ルートを「位置とサイズ」で表現するLOD200レベルが適しています。この段階でLOD300まで作り込むと、意匠側のプラン修正のたびにチーズ・分岐を描き直すことになり、やり直しコストが肥大化します。

基本設計でBIMを使う目的は、「コア・シャフト・機械室サイズの妥当性検証」と「主要ルートの納まりチェック」です。その目的に必要な粒度は、LOD200で十分なケースがほとんどです。

実施設計段階:LOD300を主軸に、ただし「部分的」に

実施設計段階は、設計仕様レベルで作り込むLOD300が中心となります。チーズ・エルボ・分岐を含めたダクト・配管ルート、主要機器・バルブ、コンセント・照明器具の位置と主要属性を表現します。

ただし、すべての部位をLOD300で揃える必要はありません。実務では、詳細度をそろえるスコープと、LOD200に留めるスコープを明示しておくと安心です。

  • LOD300:主要機器、天井裏の主要ダクト・主要配管、PS・EPS内の配管・DSダクト
  • LOD200に留める:小口径の枝管、見えがかり機器の詳細、取付金物、スリーブ・サポート
  • 属性の押さえ点:「設計レベル」まで(仕様・設計値)。型番・メーカーは原則入れない

施工段階:LOD400は原則サブコン領域

施工段階のBIMモデルは、スリーブ・サポート・フレキシブル部品・型番を含めたLOD400レベルとなります。ここまで設計者が作り込むと工数が一気に肥大化し、責任範囲も曖昧になるため、一般的には施工サブコンが担当する領域として位置づけるのが現実的です。

ただし、設計者としても「サブコンがどこまでをLOD400で作るのか」をプロジェクト初期に明示しておくことが重要です。

LODとセットで考える「属性情報」の位置づけ

LODという言葉は「幾何形状の詳細度」を中心に語られがちですが、実務では「属性情報をどこまで入れるか」も同等に重要です。欧米の議論では、これを「LOG(Level of Geometry)」と「LOI(Level of Information)」に分けて表現することもあります。

幾何形状と属性は、必ずしも同じレベルで進める必要はありません。たとえば次のような表現があり得ます。

  • 幾何形状はLOD300レベルだが、属性は「設計値と仕様グループ」まで(型番は入れない)
  • 幾何形状はLOD200レベルだが、主要機器の属性には「能力・電源・冷媒要件」まで入れる

LODだけを語って、属性の作り込みルールを決めずに進めると、「モデルはあるのに拾える情報がない」状態に陥りがちです。

LOD設定でよくある3つの誤り

誤り①|「とりあえずLOD300」としてしまう

「このプロジェクトはLOD300でやりましょう」とプロジェクト初期に一括設定してしまうと、本来LOD200でよい基本設計段階でもチーズ・分岐を描き込むことになり、以降の意匠修正でやり直しが多発します。

LODは「段階ごとに進化する」ものとして設定し、BIM実行計画書やプロジェクトメモに「マイルストーンごとの目標LOD」を明記しておくべきです。

誤り②|LODと「属性情報」を混同してしまう

前章で述べたとおり、LODだけを取り決めても、「LOD300にはメーカー・型番も入るんだよね」「コスト情報もモデルから拾えるよね」と、チームによって期待がぶれることがあります。

LODを取り決める際には、セットで「どの部位に、どの属性(型番・メーカー・能力・認証・保守情報)を入れるのか」を一覧表で明示すると、認識ズレが減ります。

誤り③|モデル全体を同じLODで揃えようとする

「このプロジェクトはLOD300」と一括で設定すると、実際にはLOD200で十分な見えがかり機器や小口径枝管まで丁寧に作り込むことになり、作業量が不必要に肥大化します。

実務では、主要スコープごとにLODを使い分けるのが現実的です。

  • 主要機器(冷凍機・AHU・幹線盤):LOD300
  • 主要ダクト・主要配管:LOD300
  • 枝ダクト・枝配管・見えがかり器具:LOD200
  • スリーブ・サポート・金物:原則モデル化しない(施工段階でサブコン)

プロジェクト開始時に決めておきたいLODチェックリスト

上記を踏まえ、プロジェクト初期に最低限取り決めておくべき項目は次のとおりです。BIM実行計画書(BEP)まで作らなくても、A4一枚の一覧表にまとめて意匠・設備・サブコンで合意するだけで、ずいぶん手戻りが減ります。

  • マイルストーンごとの目標LOD(基本設計末・実施設計末など)
  • スコープごとのLOD使い分け(主要機器・主要ダクト・枝ダクト・金物類)
  • 部位ごとに入れる属性リスト(型番・メーカー・能力・コストなど)
  • 設計者担当とサブコン担当の境界(LOD400をどちらがどこまで作るか)
  • モデル検査のタイミングと、修正・チェックの責任者

まとめ|LODは「段階・スコープ・タイミング」の3軸で見る

設備BIMのLOD設定は、「設計段階ごとに進化させる」「スコープ(部位)ごとに使い分ける」「タイミングをチームで揃える」という三つの軸で見ると、さまざまなトラブルを未然に防げます。

逆に言えば、LODを「モデル全体に一括で付ける詳細度」として誤認したまま使うと、「やりすぎ」と「やり足りず」の両方を同時に抱えることになりがちです。

パラダイムでは、設備BIMのLOD・属性ルールの設計や、プロジェクトごとのBIM実行計画書作成のサポートをしています。「うちの案件でどのLODで進めるべきか」を整理したい方は、お気軽にお問い合わせください。