
BIM図面審査の対象と提出方法|設備図はどこまでBIM化が必要か
BIM図面審査の対象範囲・提出方法・設備図に求められるレベル感を、設備設計事務所の目線で整理。意匠中心の解説では拾われない「設備図はどこまでBIM化が必要か」「BIM由来と判断されるチェックポイント」「よくある落とし穴」までを実務目線で解説します。
はじめに|BIM図面審査は「意匠の話」では終わらない
BIM図面審査に関する解説は、そのほとんどが意匠設計者目線で書かれています。そのため、設備設計事務所が本当に知りたい「設備図はどこまでBIM化が必要なのか」「現状の作図フローのままで提出できるのか」といった具体の論点には、なかなか踏み込んだ記事が見つかりません。
本記事では、BIM図面審査の対象範囲、提出方法、そして設備図に求められるレベル感を、現時点でわかっている運用情報を踏まえて設備設計事務所の目線で整理します。
BIM図面審査とは何か
「BIMから書き出したPDF」を審査する仕組み
BIM図面審査は、申請者がBIMモデルを使って作成し、そこから書き出した2D図面(PDF)を審査機関に提出する仕組みです。BIMモデルそのものを審査するわけではなく、「BIM由来の図面」を審査対象とする中間的なステップに位置づけられます。
BIMモデル審査との違い
BIMモデル審査は、IFC等のBIMモデルそのものを提出して審査を受ける本格的な運用です。図面審査が「PDFの差し替えで対応できる」レベルなのに対し、モデル審査ではモデルの整合性や属性情報まで踏み込んだチェックが入ります。設備設計事務所にとっては、図面審査の段階のうちに対応力をつけておくことが、モデル審査への橋渡しとして現実的です。
対象となる物件・規模
BIM図面審査の対象は、初期段階では一定規模以上の建築物や公共系の物件が中心です。具体的には、次のようなカテゴリの物件が該当します。
- 大臣認定が関わる物件
- 特定行政庁の判断で対象となる物件
- 先行モデル事業に位置づけられた物件
設備設計事務所が関与しやすい中規模以上のオフィスビル、医療施設、教育施設、物流施設などは、いずれも対象に含まれるケースが多いと見ておくべきです。「うちは小さい案件ばかりだから関係ない」とは言い切れない状況になりつつあります。
設備図はどこまでBIM化が必要か
結論:「BIMから書き出したPDF」であれば現状は可
現時点の運用では、設備図についても「BIMから書き出したPDF」であれば審査に通る扱いです。「BIMモデルそのものを提出せよ」とまでは求められていません。ただし、意匠側がBIMで申請するのであれば、設備側にも「BIM由来の図面」であることの整合性が求められる可能性があります。
「BIM由来か」がチェックされるポイント
審査機関がBIM由来かどうかを見る際のポイントは、図面のメタ情報と、意匠図・設備図間の整合性です。主に見られるのは以下のような点です。
- 凡例・記号体系が意匠と設備で揃っているか
- 縮尺と通り芯、階高・レベル表記が一致しているか
- 線種・線太さがBIM出力の規則に沿っているか
- 面積表・機器表とのデータの整合性が取れているか
意匠BIMと設備2DCADを併用する限り、凡例・縮尺・通り芯がずれていると「整合性なし」と指摘されるリスクが高まります。
提出方法とフロー
オンライン提出が基本
BIM図面審査では、PDFや関連データのオンライン提出が基本となります。指摘事項のやり取りもオンライン中心で進むため、紙の郵送往復と比べてサイクルが早い点は実務上のメリットです。
添付資料の構成
従来の確認申請書類に加えて、次のような資料が求められるケースがあります。
- BIM作成計画書(BEP:BIM Execution Plan)の簡易版
- BIMから書き出した図面リスト(図面名とBIMソフト名・版を明示)
- 意匠・設備間で取り決めた凡例や出力規則の規定書
設備側では、空調・衛生・電気の各図面が「BIM由来であること」を意匠側と揃えた形で提出できると、審査側の見る目は大きくスムーズになります。
設備設計事務所が押さえるべき準備
準備①意匠側のBIM運用方針を早期に把握する
意匠事務所がBIMで申請する案件かどうかを、企画・基本設計の段階で把握しておくことが第一歩です。意匠がBIM、設備が2Dというミックス運用も不可能ではありませんが、図面の整合性を担保するために追加工数がかかることは、見積もりに織り込んでおく必要があります。
準備②過去案件で申請レベルの図面を「試し出し」しておく
過去案件を題材に、自社のBIMソフトから申請レベルの平面図・系統図を書き出してみるのが、最もコストの低い準備です。「線種・凡例・記号がどこまで揃うか」「足りないファミリは何か」を洗い出しておくことで、テンプレ整備の優先順位が見えてきます。
準備③確認検査機関との事前協議を活用する
BIM図面審査は、確認検査機関ごとに細かい運用が異なります。事前協議の場で「うちの図面でOKか」を確認しておくと、申請時の差し戻しリスクを大きく下げられます。とくに初めてBIM図面審査を使う案件では、面倒がらずに事前協議を活用することをおすすめします。
よくある落とし穴
- 意匠と凡例・記号がずれ、申請直前に手直しとなる
- BIM出力だけでは申請レベルに達せず、PDF上で追記をして「BIM由来」の一貫性を損ねる
- 事前協議をせずに提出し、凡例・出力規則で指摘が重なる
- BIMソフトのバージョン違いで、意匠・設備間のデータ受け渡しが不安定になる
いずれも、申請直前ではなく基本設計の段階で「どこを誰が揃えるか」を事前に決めておけば防げる種類のトラブルです。逆に言えば、ここを後回しにすると確実にどこかで火を噴きます。
まとめ|「PDFで出せばOK」だが、準備は今から
BIM図面審査では、設備図も現時点では「BIMから書き出したPDF」で対応可能です。しかし、意匠側のBIM運用が広がるなかで、設備側にもBIM由来の図面が求められるケースは確実に増えていきます。BIMモデル審査への移行も視野に入っているため、いまのうちに自社のBIM作図環境を整え、申請レベルの図面が出せる体制を作っておくことが、中長期の受注力を支えます。
パラダイムでは、設備設計事務所のBIM作図環境の整備や、申請レベルを見据えたテンプレ・ファミリ設計、意匠事務所との凡例すり合わせ、審査機関との事前協議の伴走までをサポートしています。「うちの場合の対応ライン」のご相談は、お気軽にお問い合わせください。